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医療

手術用メスが飛ぶとき-上司の研修医への扱いはヒサンなものだった

投稿日:2015年4月17日 更新日:

たとえ見習い期間中であろうと、人の命を預かることにかわりはないのだから、ミスは絶対に許されない。ふつう新入社員には見習い期間というものがあるが、医者にはない。しいて言えば研修医がそれにあたる。慢性病患者の分厚いカルテが、必要以上にボロボロなのは、研修医をぶったたくため、ともいわれているくらいであるが、いきおい、彼らへの風当たりが厳しくなる。とくに序列の厳しい大学病院など、上司の研修医への扱いはヒサンなものである。

たとえば、K大学病院の名物助教授護は腕はいいが、気が荒いと評判である。その日のオペには研修医のA君とB君がついていた。B君は動作がトロいので、初めから助教授にののしられっばなし。使えない研修医には、大声で罵倒するわ、殴る、蹴るは当たり前である。けど、さすがにオペ中は両手がふさがっているから、そんなことはしないだろう、と思ったら・・。A君は、そんなB君を見て気が気じゃない。一方B君は、いくらなんでも殴られはしないだろうとタカをくくっているらしく、何度いっても同じミスを繰り返していた。

しびれを切らした助教授

するとしびれを切らした助教授、なんと手にしていた3本のメスを突然、投げつけてきたのであった。彼の後ろに座っていた麻酔医は、表情ひとつ変えずに、胸元に飛んできたメスをナイスタイミングでヒョイとよけた。ビュッと空を切るメスはA君の鼻先を抜け、B君の手元めがけて飛んできた。ツッと手の甲を押さえるB君。すると、助教授の隣の看護婦は、すぐに新しいメスを渡す。なんとあざやかな連携プレー。すかさず、もう1人の看護婦がB君の手に新しい手袋をかぶせる。B君はもう、なすがまま状態だ。

メスは麻酔医の椅子の横のドアに当たって落ちていた。こうして、なにごともなかったかのように、オペは続いたのである。このオペ以来、あの助教授の怒りの鉄拳は場所を選ばないことを2人は悟った。さすが助教授、元草野球の投手だけあってコントロールは抜群だ。ただ、その種類が変わるだけだった。なかでも一番コワイのは手術室での鉄拳。いくら殴られようが蹴られようが、メスが飛ぶのだけはシャレにならないということを、A君とB君は身をもって実感したのであった。

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