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医療

医学専門誌ならではの広告

投稿日:2015年4月18日 更新日:

どんな企業でも新規開業して1番苦労するのは一代目である。開業医も同じ。そこで、どこの開業医も頭を悩ますのが、跡継ぎ問題である。たとえばこんな話がある。S内科は開業して12年、ようやく経営も安定したところで、院長が心不全で急死してしまった。残っていた借金は、多額の保険金で返済できたが、2人の子どもを抱え、これからの生活を思って途方にくれる未亡人であった。院長はまだ48歳の若さである。

それでも娘はなんとか短大を卒業し、就職先も決まったが、息子のほうは三浪の身。かといって、国立大に受かる保証もない。今年こそなんとか医学部へ合格してほしいが、私大に入れる金はない。開業希望の、若く優秀な医師が娘の婿になってくれたら。せっぱつまって、未亡人は医学雑誌に広告を掲載することを思いついた。母の願いは切実だ。でもひとつ心配なことがある。一人娘は気立てはやさしい。しかし、お世辞にも美人とはいえない。

未亡人の真剣な眼差し

一報を受けて、さっそく打ち合わせに訪れた医学雑誌の担当者に、あのう、広告文に娘はブスですがと注釈をつけたほうがいいでしょうか?未亡人の真剣な眼差しに担当者は思わず、大丈夫、要は気立てですよと、まるで仲人みたいな口調でなぐさめたのである。正直者の未亡人は真顔で聞いた。さいわい、息子はみごと、国立大の医学部に合格し、雑誌広告は掲載されなかった。したがって、広告文に盛り込まれるはずの母の取り越し苦労を、娘は知らずにすんだのである。

開業したくてもできない医者も多い。金もツテも強力な後ろ盾もない、だが、ウデと頭脳と夢はあるといった青年である。たとえば地方の普通の家庭の出身者だ。こうした悩みを抱える双方の出会いに一役買うのが医学専門雑誌の広告である。せっかくここまできたのだから、一代で終わらせるのは忍びない。経営が軌道に乗り、借金を完全に返済して、本当のぜいたくができるのは、実は二代目からであるのである。

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