哲学入門

五分間ほどのスピーチを終えて

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大学の研究室や学会の席で、この文章を読んだ弟子たちから「先生、読みましたよ。大健闘されましたねえ」と言われ、この教授が「そうだろ、きみー。あれぐらいやらなくっちゃねえ」と満面笑みをたたえて答えている場面が眼に見えるようです。

「東京での一年にわたる大学紛争の後、この盛大なゲルマニスティク世界大会に出席することができ、たいへん嫡しく存じます」。「西東にまたがる詩人(ゲーテの『西東詩集』に掛けているー中島]の誕生日である今日、あなた方にレンメルト教授をご紹介いたします。

一九七年当時は各国とも大学紛争の余焼があり、レンメルト氏はこの大会後ベルリーンからハイデルベルクへ移籍することが知れ渡っていた。彼の講演に先立ちちょっとしたハプニングが起きた、と語るある先生。西独の大学生らしい男性が三分間ほど話させてくれと許可を求め、この大会への疑義を述べたてたが、三分たっても終わらないので、大声一番「もういいかげんやめてください」と言ってやめさせて、一言前置きを語った。

五分ばかりのスピーチを終えてみると

ワインのせいか、眠気ゆえのナチュラル・ハイか、あるいは言うところの「火事場の糞力」のおかげか、いずれにせよ、その場を無事切り抜けて、五分ばかりのスピーチを終えてみると、会場はわれんばかりの大拍手。

教授はまもなくハイデルベルクへ移られますが、それはベルリーンの女子学生にとってまことに残念なことです」。とたんに喚声と爆笑が湧き起こり、講演後は「レンメルト氏は研究者の主なる素晴らしい議演をなさいました」とイロニーを含んだ駄酒落、その講演の題目が「詩人の王」であったからー中島」を弄して満場を晒然とさせ、質疑も手際よくさばいたから、注目の的となり、のちのちまで語り草になったそうである。また、周りの者を馬鹿と断定することにより自分を引き上げる古典的武器ですが、これは学界のいたるところで常時使用されているようである、と、ある先生は語った。

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